そしておそらくはそれだけが在ることにより/ホロウ・シカエルボク
 
くかどうかみてみたが、やはりそれは開くことはなかったし、ガラス戸の向こうの景色は割愛されていた。こんな外界に出ようなんてとても思えない。棺へと歩いていく。コンクリ打ちっぱなしの冷たい床でスニーカーのソールが歯ぎしりのような音を立てる。棺を開いて、そこに花に囲まれた自分自身が横たわっていたらどうする?安物のホラー映画みたいな妄想が頭を過る。けれど、それは本当かもしれないという渇きがその空間には確かに存在していた。蓋に手をかけ、縁を眺めてみた。釘が打たれた形跡はなかった。棺の目につく部分にはそれぞれ、趣向を凝らした彫物があった、作られてから随分な時間が経っているのだろうか、境界線があまりにも薄くなって
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