そしておそらくはそれだけが在ることにより/ホロウ・シカエルボク
 
だっ広いスペースを眺めてみると、ちょうど真ん中辺りに棺のようなものが置かれているのに気付いた。さっきまでそんなものは存在していなかった。誰が持ち込むでもなく、屋根を突き破って落ちてきたわけでもなく、それはある瞬間に突然そこに存在していたのだ。それは、今の俺にとってそれが必要なものだということかもしれなかったし、あるいはまるで何の関係もない、それこそ世界のバグか気まぐれによって在るはずのないものが在ることになったのかもしれなかった。俺はしばらくその棺らしきものを眺めていたが、突然蓋が開いて何かが現れるというような現象は起こらなかった。まあ、だからといって、中が空っぽかどうかは開けてみなければ分からな
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