詩の日めくり 二〇一六年十三月一日─三十一日/田中宏輔
「何であれ、全体はいつも十二個に分けられる。」
「古代ローマでは、一日は三十日あった。」
「ハチドリは植物界最小の鳥である。」
「ホッテントット族の視力は並はずれている。はるか三時間かなたの蹄の音さえ聞きつける。」
「先生はいま混乱しているのです。だから邪魔をして、かき乱さないでください。」
「君たちが世界最大の望遠鏡で火星を眺めるとすると、そのとき火星は、十メートルはなれたところから先生の頭を見たときと同じ大きさに見えます。しかし、むろん君たちは、十メートルはなれたところからでは、先生の頭に何が生じているかわかるまい。だから、同様に、火星に生物がうごめ
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