詩の日めくり 二〇一六年十三月一日─三十一日/田中宏輔
視線を感じて振り向いたら
同じ町内にいた高校の先輩が、
ぼくの顔をじっと見てた
ぼくが見つめ返すと、
一瞬視線をそらして、
またすぐに
ぼくの顔を見た。
今度はぼくが視線を外した。
そのときの、そのひとの、せいいっぱい真剣な眼差しが
思い出となってよみがえる。
いくつかの目とかさなり。
「夏の思い出」という、
ぼくの詩に出てくる同級生は
高校2年で、
溺れて死んじゃったので、
ぼくのなかでは
永遠にうつくしい高校生。
あの日の触れ合った手の感触。
ぼくは、ぼくの思い出を、ぼくのために思い出す。
二〇一六年十三月二十
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