憑きものばんざい/ただのみきや
ろしている
(うせろ 見世物じゃない! )
二人で火にかけた鍋がいまもそのままだった
金輪際だいこんは抜かないし洗ったりもしない
獅子頭に股間をあてたのも十三の頃の出来心じゃないか
だが届かない 女は裸の声となって走り出し
その全身には暗い縄目模様が刺青されて行く
足あとはベンガラで染まり一足一足が彼岸花のよう
夕闇へと続き空には真っ赤な子宮が黒々と口を開けている
男は胸ポケットからペンと手帳を取り出しては何か書き
書きつけたものをまたグチャグチャにペンで塗り潰した
まるで追い詰められたインコの羽繕いのよう
(だめだ まだ終わりじゃない おれには手がある )
男は白衣を身
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