憑きものばんざい/ただのみきや
はや他者で蛸
遠浅のゆらめく光に漂って
四肢や性器を小魚に啄まれている
棄てたはずの思考がチクチク
(あれは快感 それとも苦痛かしら )
忍び寄ってそっとつないでみた
途端に射精――ミズコノミズクラゲ
別れの祭文
男は後ろ手にゆで過ぎたマカロニを隠していた
女は大きな草鞋をおんぶ紐で背負い
夕焼けをめくり始めてそれは素早く加速していった
男の声がふくらはぎに触れる前
――言葉はなくほとんど空気だったが――
等身大のこけしが飛んで来て男を直撃した
ぺしゃんこになってもまだマカロニには息があった
倒れた男の顔を赤い前掛けの地蔵が見下ろし
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