ボロ布のようなマリア/ホロウ・シカエルボク
お互いが口にした、それでおそらく意思の疎通が出来るだろうと踏んで俺は話しかけた、「こんなところでなにをしているんだ?」はぐれたの、とその影は言った、「父さんと母さんと、はぐれたの、ずっと前、ここで」そう言いながら影は全身を覆っているごわごわした髪の毛を掻き分けた、見えづらく、話しづらかったのだろう、髪の毛の中に居たのは二十代後半くらいの女だった、「それはいつの時?」うーん、女は顔をしかめて唸り、「ずっと前、ちっちゃい時」と言った、捨てられたのか、と俺は思った、「それからずっとここに居たのか?」うん、と頷く、「ご飯とか、どうしてた?」女は駄菓子屋を指さした「飴とかね、なんか、硬い…クッキーみたいなの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)