羽衣呪術/ただのみきや
 
夢見る魂が裂果する夏が来る前におまえはおまえの首を咬む
鬱蒼とした緑から忍び寄る脚韻の多い名も知れぬ虫たちが
肉体の時計の固い門に射精すると逆回転でさえずる鳥がいた
首の長い古代の母が組み上げられた偽証の焚火に爪先で立ち
煮え立つ泡沫の微笑みで辺りを錯乱させている 赤い糸で
刺繍した眼球の余白から一羽の鳥が叫びながらガラスに激突した
バッタのように跳ね上りくつがえる舌と眼球 積載量を越えている
一つの寡黙な帆船が破滅を隠匿したまま潜水艦へと移行する
周辺という名の深層から中心という名の広がりから爛熟した
桃を匂わせる記号を刺青した娘たちの悪意が解き放たれる
賽の目のように変わる
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