死作――詩に至る病としての/ただのみきや
 

破線を渡る
裸足の声がヒリヒリと
愛を反転させた
瞳の夜の半球で
毛の長い羊が音を食む
夜光虫のような手が
わたしの胸を裂きに来る
娘の失くした片目のように
恐怖に似た何かが美しく余韻を引いて
わたしは沸々と溶けてゆく
満天の言葉の下の
大河のような黒い沈黙へ





視線感染Show

言葉をいくつ塗り固めても
墓石のひとつにもなりゃしない
発酵しない景色の躁状態 錯乱だ
A4サイズの洗面器で沈没する捕鯨船
溺死するために裏返された瞼に蝶を閉じ込めて
おまえの期限切れの免許証が月の背中を掻いている
ああ浮上するものと沈むもの
水面
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