死作――詩に至る病としての/ただのみきや
水面を挟んで相殺される男と女ニュースタイル心中
こめかみに咲く紅い水中花
摘みに来た子どもの揺り椅子に犯されて
縞模様に消化されてゆくおれの頭はいつだって
小さい方の葛籠(つづら)の中で南極を齧っていた
毎日机に向かって句読点を磨くヘレンケラーの
忘我の涎(よだれ)みたいに澄んだまま
だから引力を失って胎児の体を飛び出した夢は
ノイズをまき散らし膨張し続けるだろう
虚空を喰らうジンベイザメのようなおれに
絡まり空回って追い縋る眼差しの二重らせん
サラセンのケセランとルクセンのパサラン
回線の混乱と涙腺の反乱こそ
おまえの中のおれ―――詩に至る病
視線感染新幹線
《2021年5月30日》
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