死作――詩に至る病としての/ただのみきや
影を点けたり消したりして
日時計のように巡らせている
光に穿たれたぼろぼろの影を
やがて分厚い寒さだけを一枚纏う
素描の裸婦像
その肌は雪を融かさずにそれと和む
恋人から襟巻でもかけてもらうかのように
だが春には一年間溜まり溜まった想いが
言のない葉となって一斉に芽吹き出すのだ
無数の記号には裏表があり
見つめる光で色味を変えながら
風の声音で朗読されるが
その音と心はしっかりとは結ばれず
意を定めない ただそれを
総身で浴びる心地良さ
死作の勧め
誰もどこにもいない
川べりの
柳の下で
わたしは棺に入る
仮病で早引きした学生の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)