死作――詩に至る病としての/ただのみきや
 

詩が手段ではなく目的になってしまった
ジャンキーを詩人だと思うことはあるが
詩で世のため人のため役立とうとする人の
美しい誤謬がいつまでも続いたら良いとも思う
桃という言葉が醸し出す
すこし腐りかけた匂いに酔うように

 

語るべき伝えるべき大切な言葉があるとしたら
それはわたしの詩ではない

時代に根差すこともなく流れ漂う浮草のように
自分がなにものかもすっかり忘れて





樹化

樹はもっとも言葉から離れた人間
鳥や虫より寡黙に
ただ風の戯れに任せて
生涯そこに在る
選択でも諦めでもなく
ただ己として己に立つ
影を
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