鬼/板谷みきょう
 
れて、「鬼が村を襲ってくるかも知れん。」という、聞くだけでも、背筋の寒くなるもんだった。

与一という名の男は、その村の出身だった。
八年前におっかぁと二人暮らしだったが、おっかぁを山さ捨て、都に行ってしまった。
村の者に聞けば誰でも解る、あばれ与一って言えば。

与一は都でサムライになった。
なんでも、いくさでたくさんの首を取ったんだと。
その与一が、村の噂を耳にしないはずがない。

「よぉし。鬼なんぞ俺が退治してやろう。鬼を退治に山へ向かう。」と、かつての、あばれん坊の与一の言葉に安心したのか、村の男たちもこぞって加わった。

 山の端々から、くわやら、かまやらをかざし
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