詩の日めくり 二〇一六年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
河川敷のベンチに腰かけていた。
しょっちゅう、ふつうの居酒屋に出入りもしていた。
いつごろから有名なのかも不明なのだけれど
いつの間にか人々も忘れるのだけれど
ときどき、その時代時代のマスコミがとりあげるから
彼は有名な死体だった。
彼とセックスをしたいという女性や男性もたくさんいたし
じっさいに、多くの女性や男性が彼とセックスした。
彼とセックスした女性や男性はみんな
死体と寝てるみたいだと当たり前の感想を述べた。
したいとしたい。
死体としたい。
しないとしたい。
液化したトンネルの多くが彼の喉に通じていて
彼の喉は深くて暗い。
彼の
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