詩の日めくり 二〇一六年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
やけれど
横断歩道にいた歩行者の顔がひきつっていたり
トラックの運転席の男の顔がじっくりと
ゆっくりと眺めていられたのだけれど
時間の拡大というか
引き延ばされた時間というのか
それとも意識が拡大したのか
おそらく
物理時間は短かったんやろうけれど
意識の上での時間が引き延ばされていて
何年か前にも
背中を車がかすって
服が車に触れたのだけれど
車に轢かれるときの感じって
おそらく、ものすごく時間が引き延ばされるんやろうね。
だから、一瞬が永遠になるというのは
こういった死そのものの訪れがくるときなんやろうね。
じつは
トイレ
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