詩の日めくり 二〇一六年六月一日─三十一日/田中宏輔
 
ものだった。読書で、ぼくの記憶に残っているものって、ごくわずかなものなのだなってことがわかる。まことに貧弱な記憶力だ。『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』も、むかし読んだのだけれど、まったく記憶がない。記憶に残らない可能性が高いのに、むさぼるようにして、ほぼ毎日、読書するのはなぜだろう。たぶん、無意識領域の自我に栄養を与えるためだと思うのだけれど、読むことでより感覚が鋭くなっている。感覚が鋭くなっているというよりは、過敏になっているというほうがあたっているような気がする。齢をとると、身体はボロボロになり、こころもボロボロになりもろくなっていくということなのかもしれない。ちょっとしたこと
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