ガラスの精進/ただのみきや
れが
いまチューリップを食べ散らかす
日差しが歪んでいる
片えくぼの生贄のように
*
――見つけた
なんにも見てはいないけど
――辿り着いた
どこにも行ってはいないけど
一輪の花だ
花は大地
花は海で空
存在の真空にゆらめいて
共に消え果てる
宇宙の
実で質でもない様相こそが
*
口を縫い付けられた男の目配せの先
砂漠を渡る蝶がいた
青白い鬼火のように
箱の中の女から蜜を吸う
一冊の本から発芽した
肉体は火と水を合わせ持ち
目隠しのまま止めどなく揺らめいた
大きな腕時計が示す角度に
少女の頬のよう
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