ガラスの精進/ただのみきや
と少しの勇気も
ボートを漕ぐのはあまり上手くない
人生で十回も漕いだろうか
どれもこれももう何年も漕いでない
棺桶には帆を張ろう
サイコロを振るように
見つけられれば歌うだろう
見つけた者の言葉を通して
*
割れたガラスは尖っている
割れる前と同じで澄んだまま
太陽に影響され過ぎて
形も忘れて燃え上り
道端からギラギラねめつけるが
夜には素に戻る
暗闇と自分との境はどこだろう
自分はいったい何なのか
そんな問いがそのまま答えだと
感じ始めたころ
少し円みを帯びる
あるいは木端微塵
そんな微細な欠片の前で
蟻が触覚を整えている
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