来迎/葉leaf
木肌に触れるとき、今でも呼び声が聞こえる。僅かな冷気とざわめきとが手のひらに集まると、「彼方」は僕をとらえ、その磁力で僕の内皮に烙印を押す。郷愁の調べがさざ波のように揮発する。そして僕は反転する風景の中で、やさしさの意味と出自を思う。
描くことは無に開かれた義務であり、僕を熱する。そうやって、薄片の地球を保つ。
事務員の子宮に胎児を描いていると、光が潜行した。僕は、精神病棟へと向かう僕を、描く。流動する建材は冷え冷えと影を射止め、階梯はおもむろに高度を呑み込む。堅牢な距離を得て、遠近のない闇へと浮かぶ。浮かばせる。顔のない精神科医は幻覚を見る少女を招いた。少女は闇を背負い、奇異な行為の
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