詩の日めくり 二〇一六年四月一日─三十一日/田中宏輔
日のことだった。
ダンテの『神曲』の原著のコピーをとらせてもらう約束をしていたので
近衛通りだったかな吉田通りだったかな
通りの名前は忘れたけれど
京大のそばのイタリア会館に行くことになっていたのだが
そこに向かう電車のなかで
向かい側のシートがすうっと透けて
イタリア会館のそばの道路の映像が現われたのだった。
その映像は、イタリア会館のそばの道路と歩道の部分で
人間が歩く姿や車が動く様子が映っていた。
居眠りをしているのではないかと思って、目をパチクリさせたが
映像は消えず、しばらくダブルヴィジョンを見ていたのだった。
電車が駅にとまる直前にヴィジ
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