鈴の舞踏/ただのみきや
 
よ風相手に練習中
陽炎のめくるめき
ターンしながら
遠く 遠く

 *

花弁は風に誘われて
小さな蝶に姿を変えた
車の窓から迷い込み
わたしの膝で翅を休めた
どうか目覚めず
そのまま蝶の夢を見て


――ほら正夢
ナミテントウがウインドウを行く


 *

風が渦を巻き
桜の花弁が円を描く
つられてマルハナバチも円を描く
旋回舞踏
春は裳裾をひるがえす

 *

求めているのは幻影ではない
魂の空白の形を投影する
言葉の依り代だ
この真空 この渇望
痛みを相殺するひとつの像
一編の詩を書くことは
一つの恋とその墓標

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