鈴の舞踏/ただのみきや
 

書き続けることは
繰り返される祭儀
得ることと失うことの
対の繰り返しだ
喪失とカタルシス
陰に脱ぎ捨てられた下着
哀しいエロチシズムの幽霊だ

 *

桜には憧れはあっても郷愁はない
美しさに見惚れる前に
その美の概念がわたしに侵入した
たぶんテレビや小説や漫画から

いつまでも 現れては消える
艶やかで儚いもの
幻の女 あるいは 潔い男たち
一種のJapanesque

蒲公英にだけは郷愁を感じる
美しいという言葉さえ知らないころ
それは太陽がまき散らした黄の軍団
野原を埋め尽くす連鎖爆発だった

 *

雨の日には森をさまよう
一羽の雉鳩が
針葉樹に漉(こ)されて落ちる
澄んだ雫に欹てる

そんな姿を細く手繰って

あなたの涙は音のない銀の鈴
弦の上に降り注ぎ
わたしは鳴らずにいられない


        
                 《2021年5月3日》









戻る   Point(2)