ほころんでもほどけない蕾のために/ただのみきや
汚れたハンカチに包まれた
しゃぶり尽くされた小指の骨
舌の上の石仏
そこにはない
闇の中に軌跡を隠し
垂直に上がってくる
地下水のような女
ナイフのような魚
沈黙の固い蛹の中で熟成された夢も
虹色の翅も匂いだけを残して煙になる
無限に置換されながら
新たな傷を刻む
磁針のように瞑った眼差しで
地の果てをさまよう
愚者の餓えにのみ住まうもの
*
あと二週間もすれば桜が咲くと言う
食卓の下を散策していた
蜘蛛を手の甲に乗せ
延々と繰り返される四季の巡りと
時間と生の不可逆性により綻び裂けた
たなびく襤褸のうす青くくすんだ声に
天秤が傾くまで酒を注
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)