ほころんでもほどけない蕾のために/ただのみきや
るかのように
山々は稜線を顕わにし
まだ白い額を空の胸に沈める
枯れてもつれた静寂が
またひとつ風に転がって
耳は彼方 盲いた猟犬となる
忘却は次々と上書きされる
永遠を永遠と気付けないほどに
*
日差しが土を温めて
小さな羽虫が湧き立つと
思考から切り離された回路を
移動しながら行き巡るもの
すでにある名では呼び難く
観察者により姿を変えるもの
生命という現象さえその照り返し
立ち昇る陽炎に過ぎない
巡る度に懐かしく
未知なる餓えを起こすもの
鳴きたくても声が出ない鳥
泣きたくても涙が出ない少女
言葉を見つけられない詩人の
汚れ
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