詩の日めくり 二〇一五年十三月一日─三十一日/田中宏輔
ディキンスンやペソアという詩人の活動とその後の評価を知って、つぎのようなことを考えた。詩人にとって、無名であることは、とても大切なことなのではないか。名声がないということは、名声が傷つけられて、こころが傷むことがない。生きているときに尊敬されていないということは、傲慢になりがちな芸術家としての自我が慢心によって損なわれることがないということだ。生きているときに権威がないのも、じつに好都合だ。権威をもつと、やはり人間のこころには、驕りというものが生ずる可能性があるからだ。生きているときに、名声を得ることもなく、尊敬されることもなく、権威とも無関係であること。これは、詩人にとって、とても大切なこ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)