コミュニケーションと詩/朧月夜
 
だと言って良いでしょう。手紙や伝聞ではなく、届かぬ思いが形にされる時、美しい光芒を放つことがあります。それは、その届かぬ高さ故だと見ることもできます。
 独語が作品になった時、それは遠い存在である読者との対話だと見なすこともできます。歴史や世界の表に現れずに消えて行った作品は、独語そのものですが、その淡い薄闇の中から浮かび上がってくる叙述は、時には遠く離れた時代に生きる、見ず知らずの者同士の対話であると見なすこともできるのです。
 昭和初期の詩人である立原道造は「詩は対話である」と言いました。しかし、対話であることを意識せずに書いた作品であっても、読者という他者が現れた時、その言葉は独語から対
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