流木は言った、他/道草次郎
えば 空腹で満たされる哀しみが あってもいいだろう どこかで分解された変換率が わんわん泣いている 虹色の鰓にファスナーを取り付けよう そうすれば遠浅の海は 空の彼方に しめやかな施錠の音を聴くだろうから。
「球体の表面」
とても大きな球体の表面で 安穏な形而上学を手に 見上げる夜空 宇宙は端的に言って 底かもしれない 記憶の重さにいつか 化石も熔けてしまうに違いない けっきょくは 此処には何もありはせず ただ 星の混じった流砂ばかりが 老けた未来史を せせら笑っていた。
「春の椿事」
よわい政略にも 虹は架かり ゴングはともかくも処を択ばな
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