流木は言った、他/道草次郎
 
ばない 治癒と熱とが 世界線にへばり付き 無為と緑青とが 黄金の桜をふらせる デルタ地帯に 昴は燦然とみのり 銅線のゆるやかな撓みに 人の指を離反した 中性子が回転している 星雲もまた 一本の棕櫚縄に過ぎず 縫合された夢の断片は 夜々朧に発光し むなしい春の珍客に 甘んじている。


「蟲」

哨戒 虫らの 謎の政治 切り抜かれた論理(担がれてゆく葉っぱ) 絆されたかすがい(列島にもありふれた土塊) 引き止められた信号(ボイジャーの金製レコード版) 彼ら その私的生活記録 かなしみの分譲塚 可能の氾濫 その按配 差し出された手を 握る脳髄 複眼。


「運命」

運命論者 首ヘルニア ギプスの固定 一方向 概ね後方にて うち釘 閉じた永遠 ひらけた無限 数字に置換 時間は憮然 枯れた言葉の羅列と 無能の秘策 無自覚な皮肉に のせる顎の無さ 二つの眼球の質量増加に 悩まされる日々 困りものの恩寵 それこそが 運命。






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