反省なんかしない/ただのみきや
 
た一つの石炭が
なにも燃やさずただ己だけ
苛むでもなく
黙々と昇華する
その在り様を
激しくても去って行く熱と
形も区別も失くした灰へ
ゆっくりと
迅速に
移行する
熱く明々と
孤独の思索は
言葉故の不完全さを
人に自覚させず
愛は回りくどく
損得を詰問し
目録の中でのみ微笑んで
エントロピーのうねり
神の無形の掌の
現象でしかないグラスの中
空箱の中身を競わせる
どんな理想が
どんな思想が
どんな未来予想が
一個の石炭に勝る
生を人に保障するのか
それに直接触れるには
脆弱すぎる手が
ペンを持ちキーを打つ時
言葉は灰ではないと
嘯くより
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