夕焼けの記憶/道草次郎
 
葬儀がすんだ数日後、ぼくはかかりつけの内科へ行き、降圧剤と強めの安定剤を処方してもらった。そして、市の事務局へ電話をし、衝動的に登録した災害ボランティアが出来なくなった旨を伝えた。

自分は、祖父と見たあの夕焼けに値するような人間ではない。自分はそうあれなかった。そんな自分をぼくは掃き溜めに捨てたかった。また、そうした事を思う事さえ何か非常に腐っている事のようにさえ感じた。

あの、おそろしい津波が襲った映像をテレビで観た夜、ぼくは意味も分からずひどい鼻血を出した。その際、口に入った僅かの血の味は今でも覚えている。あの時、ぼくは、ほとんど取り乱してしまっていたと思う。鉄の味に感じたのは、生
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