詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
求めよ。
吉田くんを切断するときは、水中で肩から腹にかけて斜めに切断すると、水に触れる断面積が大きくなるのでよい。水中で切断するのは、空気中では出血した水が飛び散るからである。切断面から水を吸収した吉田くんは、すぐさま元気を取り戻して生き生きとした美しい花をたくさん咲かせていくはずである。
吉田くんは立方体で、上下の面に2本ずつの手がついており、4つの側面に2本ずつの足がついている。顔は各頂点8つに目と鼻と耳と口が対角線上に1組ずつついている。吉田くんを地面に叩きつけると、ポキポキと気持ちのよい音を立てて、よく折れる。
二〇一五年九月三十一日 「ナボコフ全短篇」
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