詩の日めくり 二〇一五年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
親のことを作品に書き込もうと思っている。とても苦労したひとなのだ。もらい子といって、親に捨てられて養子に出された身の上だ。ぼくは父親が商売をはじめて成功したときの子だから、貧乏というものを知らないけれど、父親は貧しい家に引き取られたから、苦労したらしい。貧しい被差別部落の方の家に引き取られたらしい。ぼくとは血のつながりのない祖母だけが確実に被差別部落出身者であることがわかっているが、ぼくの実母も被差別部落出身者なので、因縁があるのだろう。ぼくには子どもがいないので、たくさんの遺伝子の連鎖が、ぼくで終わる。実母は精神病者でもあるので、ぼくで終わってよいのかもしれない。人生は恥辱と苦難の連続だもの。と
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