詩の日めくり 二〇一五年八月一日─三十一日/田中宏輔
験があるのだった
そのたびに詩人はくやしい思いをしてきたのであった
詩人は床の上にいくつかの言葉を並べて
その順番にスケッチブックの上に置いていった
ほとんどの言葉は置かれた場所に貼り付いていたのだけれど
ひとつだけ
置かれた場所が気に入らないのか
どうにかして置かれた場所から離れようとしてもがいていた
詩人は「動くなよ」とつぶやいて
その言葉の端々をおさえて
しっかりと両面テープに貼り付けた
それでもその言葉は
詩人がトイレに行っているあいだに
なんとかしてその貼り付けられた場所から逃げ出したのであった
詩人はトイレからもどってくると
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