詩の日めくり 二〇一五年八月一日─三十一日/田中宏輔
いなくなった言葉をさがした
部屋の隅に置いてある本をどけたり
鞄のなかを見たり
ファイルのメモのなかに隠れていないか
本棚に置いてある本や
ルーズリーフ・ノートをペラペラとめくったりして
はては
CDラックからCDを一枚一枚取り出して
CDの後ろに隠れていないかさがしたり
洗濯物を一枚一枚ひろげたりして
一生懸命さがしたが
逃げ出した言葉はどこにもいなかった
こんなときには「言葉探偵」に頼めばいいんだけど
詩人には「言葉探偵」を雇うお金がなかった
それに「言葉探偵」のところに行ったって
その言葉をさがしているあいだ
いつのまにか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)