詩の日めくり 二〇一五年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
やな言葉を撃退します

詩人は夏が一番きらいだった
夏は詩人が一番嫌いな季節だった
考えたくなくても
つぎからつぎに思い出が言葉となって
詩人の頭のなかに生まれてくるからだった
思い出したくなかった思い出が
詩人を苦しめていた
詩人は「言葉キラー!」を買ってきた
ちょっと落ち着いて考えたいことがあるんだ
詩人はそうつぶやいて
部屋中に「言葉キラー!」を振り撒いた
「言葉キラー!」はシューシュー
勢いよく噴き出した
噴き出させすぎたのか
詩人はゲホゲホしながら
窓を開けた
すると
また思い出したくない言葉が
窓の外から
[次のページ]
戻る   Point(14)