美しい女/黒田康之
れて彼女が来る
知り合いだろうか
いや覚えがない。
角川文庫
創元社SF文庫
彼女はスマホを取り出し
何かを調べながら僕のそばにくる。
ちくま文庫
岩波文庫
エピクロスを手にすると彼女の姿が消えた
よし
と思ってしばらく読んで、さっきの本を
と思うと
彼女は僕の正面の新書コーナーにいた。
慌てて雑誌のコーナーに。
ここなら大丈夫と
角川の『短歌』を眺めていると
数冊を手にした彼女は僕の横で『文学界』を手に取った。
中程にあった気鋭の数首は
その時
もうすでに彼女の声であり、吐息であった。
本を閉じる指にははっきり彼女の体温があっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)