詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
ふも
わたくしたちのように
この銭湯でハゲを見て
湯舟のなかで
ひそかに嘲笑し
わたくしたちのように
楽しく時を過ごしたのだった

わたくしたちはいつまでも
わたくしたちのちちそふのように
黒々とした美しい髪の毛を
ふさふさと
ふさふさとさせるだろう

そしてわたくしたちの美しい髪の毛を
ハゲは羨望の眼差しで見つめるのだろう
むかし
わたくしたちのちちそふの美しい髪の毛を
羨望の眼差しで見つめたように

それはわたくしたちの快感である

よる寝るまえに
わたくしたちは鏡をとって
頭をうつす
頭のうえはふさふさとして
わたくしたちはほほえみながら
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