詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
ちゃい。
湯舟から
ハゲが這いあがってくると
わたしたちはそれが腰かけて
身体を洗って
ひげを剃り
そのツルツル頭を洗うのを見る
ハゲでもシャンプーを使うのだ
身体だけはへんに毛深くて
毛の生えた十本の指で
頭を?きむしりながら
ハゲは泡となり
わたくしたちはひそかに嘲笑し
湯舟のなかで
楽しく時を過ごさせてもらう
ここは銭湯であり
湯舟はひろく
わたくしたちきょうだいの家からそう遠からぬ
代々ハゲにならないわたくしたちは
わたくしたちのちちそふの面影を
くりかえし
くりかえし
わたしたちのこどもにつたえる
わたくしたちのちちそふも
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