詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
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二〇一五年七月二十八日 「思い出。」


振り返ってはいけないと
あなたはおっしゃいました。

顧みてはならないと
あなたはおっしゃいました。

でも振り返らずにはいられないでしょう。
でも顧みずにはいられないでしょう。

あなたも、わたしも
わたしたちのふたりの娘も、みな
あの町で生まれ、あの町で育ちました。

ところが、あなたは
わたしたちに、あの町を捨てていこうと
思い出を捨てていこうと言われました。

いったい
あのふたりの男たちは何者なのですか。
主なる神のみ使いだと称するあの二人の男たちは。

いったい
どうしてわたした
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