詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
父の振る舞いが、それほど無慈悲なものではないということに、少なくとも、世間並みの無慈悲さしか持ち合わせていなかったということに気がついた。なんといっても、うちは客商売をしていたのだ。そして、同時に、ぼくは、そのとき、その青年の片方の目の、眼窩のくぼみを、なぜ、目のあるべき場所に目がないのかという単なる興味からだけではなく、自分にはふつうに見える二つの目があるのだという優越感の混じった卑しいこころ持ちでもって見つめていたことに、そのくぼみのように暗い静かなその青年の物腰から想像される彼の歩んできた人生に対しての、ちょっとした好奇心でもって見つめていたことに気がついたのである。振り返ると、いたたまれな
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