詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
ぼくの部屋にやってきました。あやしているときに畳でおでこをこすってしまったと嘘をつきました。お手伝いのおばさんは、オロナイン軟膏を持ってきて、弟のおでこに塗りました。おばさんの指がおでこに触れると、痛がって、弟はさらに激しく泣きました。
いまはもうその火傷の痕はあまり目立ちません。目を凝らしてよく見ないと、ほんの少しだけまわりの皮膚よりも皺が多いということはわからないでしょう。でも、ぼくには見えます。はっきりと、くっきりと見えるのです。弟と話をするときに、知らず識らずのうちに、ぼくは、目をそこへやってしまいます。
自分を罰するために? それとも自分を赦すために?
誰に向かってお前は嘆
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