詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
って、お金を渡して、品物と釣り銭を受け取りました。
家に帰って、買ってきたものと、お釣りをテーブルのうえに置くと、ぼくはさっさと自分の部屋に戻りました。
その晩、ささいなことで母にきつく叱られたぼくは、まだ赤ん坊だった弟を自分の部屋であやしているときに、とつぜん、魔が差したのでしょう、机のうえにあった電灯の笠をはずして、裸になった白熱電球を弟のおでこにくっつけました。弟は大声で泣き叫びました。そのおでこの赤くふくれたところに、たちまち銀色の細かい皺ができていきました。あわてて電球に笠をかぶせて元に戻すと、ふたたび、ぼくは弟をあやしました。台所にいたお手伝いのおばさんが、弟の声に驚いて、ぼく
[次のページ]
戻る 編 削 Point(17)