詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
 

 齢の離れた末の弟が大学受験をする齢になりました。十八才になったのです。いまでも頬は紅くふくれていますが、幼いころは、ほんとうにリンゴのように真っ赤になってふくらんでいました。とてもかわいらしかったのです。
 ある日、近所の餅屋に赤飯を買いに行かせられました。ぼくはまだ小学生でした。四年生のときのことだったと思います。なにかのお祝いだったのでしょう。なんのお祝いかは、おぼえていません。顔なじみの餅屋のおばさんが、ぼくの目を食い入るようにして見つめながら、「ぼん、あんたんとこのお母さん、ほんまは、あんたのお母さんと違うねんよ。知ってたかい?」と言ってきました。ぼくは返事ができませんでした。黙って
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