詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
きていた。
もしも網が破けてなかったら
団栗橋から葵橋まで
また、鴨川に沿って、ついて行かなくちゃならない。
こんなに夜遅く
友だちは、みんな、もうとっくに眠ってる時間なのに。
宿題もまだやってなかった。
風が冷たい。
父はまだ潜ったままだ。
ぼくは拳よりも大きな石を拾って
魚の頭をつぶした。
父はまだ顔を上げない。
ぼくは川面を見つめた。
川面に落ちた月の光がとてもきれいだった。
うっとりとするくらいきれいだった。
ぼくはこころのなかで思った。
いっそうのこと
父の顔がいつまでも上がらなければいい
と。
二〇一五年七月二十四日 「弟。」
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