詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
 
て かわいらしい
こどもの手 こどもたちよ

わたしは 野に咲く タンポポ
どこにでも 咲いています

たとえば 夕間暮れ
駅からの帰り道
数多くの疲れた目が
わたしのうえに休んでいきます

たとえば 街路樹の根元
信号待ちで 立ちどまったベビー・カー
無情のよろこびに目を輝かせて
幼な児が手をのばします

わたしは 野に咲く タンポポ
どこにでも 咲いています

わたしを摘むのは やさしい手
小さくて かわいらしい こどもの手

こどもたちよ
わたしを摘みなさい

こどもたちよ
わたしを摘みなさい


二〇一五年七月二十一日 「裸木。」
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