詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
ていう可能性もあるしね。
でも、ぼくが、けさ目が覚めたときには、はっきりと、自分の意志で虫になりたいと思って、虫になったんだ。べつに頼まなくっても、妹はぼくにリンゴを投げつけてくれるだろうし、無視してくれたり、邪魔者あつかいしてくれる両親もいる。ぶはっ。いま思ったんだけど、投げつける果物がリンゴっていいね。知恵の木の実だよ。ところで、ぼくが目を覚ましたときには、家族はまだだれも起きてはいなかった。五時をすこし回ったところだった。朝に弱いうちの家族は、みなだれもまだ起きてはいなかったのだ。まあ、なにしろ、五時ちょっとだしね。ぼくは、近所のファミリー・マートに行って、スティック糊をあるだけぜんぶ買
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