詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
、ほんとうに心配そうな顔をしてたっけ。)
もしも、ぼくが、そこで卒業してたら
卒業アルバムで、あいつの名前が知れたんだけど
ぼくは、また転校したから……
だけど
名前じゃなくって
あいつって呼んでる
そう呼びながら
あいつの顔を思い出すことが
気に入ってる。
そう呼びながら
そう呼んでる、その呼びかたが
気に入ってる自分がいる。
あれ以来
あいつのように
やさしく声をかけてくれるようなやつなんていなくって
ひとりもいなくって
ぼくは、それを思うと
あの束の間の田舎暮らしがなつかしい。
とてもなつかしい。
やぼったいけれど
とても
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