詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
てもあたたかかった
あいつ。
あいつのこと。
二〇一五年七月十七日 「変身。」
グレゴール・ザムザは、朝、目が覚めると、一匹の甲虫になっていた。ぼくは、この話を何十年もまえに読んでいた。それは、日本語でもなくって、ドイツ語でもなくって、英語で読んだのだった。自分が受験した関西大学工学部の英語の入試問題で読んだのだ。もちろん、そのときは、まだカフカの『変身』なんて知らなかったから、というか、文学作品なんてものを、国語の教科書以外で目にしたことがなかったから、変な話だなあと思いながら読んだのだった。でも、妹がリンゴを投げつけるところまで出てたんだから、あれはきっと、問題をつく
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