詩の日めくり 二〇一五年七月一日─三十一日/田中宏輔
、ぼくをおぶることになったのか
それはわからない。
ただ、あいつは、クラスのなかで、身体がいちばん大きかった。
でも、そんなことは、どうでもよくって
あいつが、ぼくをおぶって保健室に連れてってくれて
(保健室には、だれもいなかったから)
あいつが、ぼくをベッドに寝かしつけてくれて
ひと言、
「ぬくうしときや。」
って言ってくれて
先生を呼びに行ってくれた。
もう四十年以上もまえのことなのに
どうして、いまごろ、そんなことが思いだされるのだろう。
あいつの名前すら憶えていないのに。
(そういえば、あいつは、ぼくのことなんか、ちっとも
知らなかったくせに、ほ
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