詩の日めくり 二〇一五年六月一日─三十一日/田中宏輔
た「小説について」というエッセーのようなもののなかに、つぎのような言葉があるのだ。「その後、フロベールも、ときどき会っているうちに、私に好意を感じてくれるようになった。私は思い切って二、三の試作を彼の手もとにまでさし出した。親切に読んでくれて、こう返事をしてくれた。「きみがいまに才能を持つようになるかどうか、それは私にはわからない。きみが私のところへ持ってきたものはある程度の頭のあることを証明している。だが、若いきみに教えておくが、次の一事を忘れてはいけない。才能とは──ビュフォンの言葉にしたがえば──ながい辛抱にほかならない、ということを。精を出したまえ」」(杉 捷夫訳)。モーパッサンがフロベー
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